福祉住環境整理(介護整理)とは? 在宅介護に必須の整理方法
国民の4人に1人が65歳以上の高齢者である日本は、世界に類を見ない超高齢社会です。ここ数年、高齢者の一人暮らしや認知症も増加し、高齢世帯のゴミ屋敷化が社会問題となってきました。今後、高齢化はますます加速することから、問題解決の具体的方法が模索されています。その方法の一つが「福祉住環境整理(介護整理)」です。これは、介護を必要としている高齢者のために、住環境を整えるもので、最近、注目されています。この記事では、福祉住環境整理の方法や専門業者について紹介しましょう。
この記事を読むことによって、福祉住環境整理について知ることができます。実家の整理や将来の備えにぜひお役立てください。
1.福祉住環境整理とは?
加速する超高齢社会の中で、高齢者のゴミ問題は、福祉の観点でも解決すべき問題です。その解決方法として、最近注目されている福祉住環境整理(介護整理)について説明します。
1-1.どんなことか?
福祉住環境整理は介護整理ともいい、介護が必要な高齢者や障害者のために、暮らしやすい住環境を整えることを指します。その中心となる方法は、不要な家財道具やゴミなどを片付けることですが、これを介護の観点から行うのがポイントです。同じように個人の所有物を片付けるものに、生前整理や遺品整理がありますが、介護という視点がない点で異なります。また、似ている言葉に「福祉住環境整備」というものがありますが、これは、バリアフリーなど、住宅の改修工事を伴う場合に使われるものです。
1-2.福祉住環境整理の目的
福祉住環境整理は、高齢者や障害者が、日常生活において安全に、かつ、なるべく自立して過ごせるように住環境を整えることが目的です。自分で片付けられない大量のもの(不用品)を処分することで、室内での移動や日常生活をスムーズにできるよう促します。十分なスペースをとることで介護サービスも受けやすくなるのです。身の回りのものが少なくなれば自分で管理するのも容易になり、自立した生活を続けることができます。
1-3.現状と社会背景
近年は一人暮らしの高齢者が増え、それに伴い介護が必要な高齢者の数も急増しているのが現状です。そんな中、高齢による身体能力の低下や認知症、セルフネグレクト(自己放任)が増加しています。セルフネグレクトとは、通常の生活において当然行うべき行為を行わないことにより、心身の安全や健康が脅かされることです。このような背景から、自分でゴミ出しができない、片付けができないなど、部屋がゴミ屋敷化するケースが増えていると考えられます。
2.福祉住環境整理の必要性
団塊の世代が75歳以上になる2025年をめどに、政府は、「地域包括ケアシステム」の構築を推進中です。これは、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最後まで続けることを目標としており、これにより在宅介護の割合が増えることが予想されます。したがって、自宅における住環境整理は今後重要度を増すでしょう。ここでは、福祉住環境整理の必要性について説明します。
2-1.なぜ必要なのか
介護が必要な高齢者にとって、住環境を整えるのは最も大切なことの一つといえます。なぜなら、室内で過ごすことが多いため、安全に過ごせる環境が必要だからです。また、ゴミがたまった乱雑な部屋で過ごすことは、不衛生なばかりか精神面にも悪影響を及ぼします。そこで、ゴミや不用品を処分し、安全で過ごしやすい環境に整える、福祉住環境整理が必要になるのです。
2-2.誰が行うか
高齢者や障害者の住環境整理は、本人が自分で行うことができない場合がほとんどです。そのため、家族や介護員(ヘルパー)などまわりの人が行うことになります。
2-3.いつごろから始めるか
福祉住環境整理は、介護が必要になったタイミングで行います。しかし、それ以前に住環境の整理をしておくことが、室内での転倒や事故の抑制にもつながり、介護のリスクを減らすことにもつながるでしょう。
2-4.相談窓口など
意外と知られていませんが、介護認定を受けていれば部屋の掃除やゴミ出しも介護保険適用で援助が受けられます。福祉住環境整理も、介護サービスとして適応されるケースもあるため、最寄りの地域包括センターや担当ケアマネージャーに相談するといいでしょう。
3.福祉住環境整理の方法とコツ
福祉住環境整理について、具体的な方法やコツを紹介します。
3-1.方法
福祉住環境整理は、介護を受ける本人の了承を経て、家族や介護員が協力して行います。しかし、大量のゴミや不用品があり、自分たちだけでは対処しきれないケースもあるでしょう。そんな場合は、不用品回収の専門業者に依頼する方法もあります。この方法については、次の章で詳しく説明しましょう。
3-2.自分でやる場合の手順と流れ
3-2-1.本人に了解を得る
初めに、本人に了解を得ます。ゴミやものを処分し、片付けすることを伝え、要・不要の判断などは協力してもらいましょう。まれに、収集したゴミを捨てたがらない場合があります。抵抗が激しい場合は無理強いしないで、少しずつ進めましょう。
3-2-2.分類・処分する
次に、残すもの・処分するものに分類していきます。現在使っていないものは思いきって処分し、大幅に持ち物を減らすようにしましょう。
3-2-3.収納を考える
ものの処分が終わったら、生活動線を考えながら、家具の配置を変えたり、よく使う生活用品の収納場所を決めたりしていきます。自宅で訪問介護を受ける場合は、ケアマネージャーやヘルパーさんと相談し、介護ベッドの位置などを検討するといいでしょう。
3-2-4.メンテナンス
片付いた状態がキープできるように計画を立てます。ゴミ出しや片付けが自分でできない場合は、定期的にヘルパーさんに支援してもらうといいでしょう。
3-3.福祉住環境整理のコツ
- ものを減らす:1番大切なのは、不要なものを処分すること。現在の暮らしに直接関係のないものはすべて捨てる、という気持ちで取り組むといい
- 家具を減らす:タンスやソファなど、大きな家具を処分することで、部屋が広くなり、介護や介助もスムーズになる
- 床に余分なものを置かない:足元にものが散々しているとつまずきや転倒の危険があるため、排除する
- 高い場所に収納しない:目線より高い位置の収納は、取り出しにくいうえに、動作に危険が伴う。日ごろ使うものは自分で出し入れしやすい位置に収納する
4.福祉住環境整理の業者について
最近は、福祉住環境整理に対応する業者も増えてきました。自分たちで手に負えない整理は、なるべく早く専門業者に依頼するといいでしょう。
4-1.いつ、どんな場合にお願いするか
福祉住環境整理を依頼するのは、以下のようなケースが考えられます。
- 介護が必要になったので部屋を片付けたい
- ゴミ出しができずゴミ屋敷になっている
- 施設への入居が決まったので部屋を整理したい
- 離れて暮らす親の住環境を整理したい
- 退院に伴い介護ベッドを入れるために自宅を整理したい
福祉住環境整理をすることで、住まいは本来の機能を取り戻し、介護サービスを受ける側も提供する側も、やりやすくなります。また、アパートの明け渡しなど期限が決まっている場合や、家族が離れて住んでいる場合なども、業者に依頼することでスピーディーに片付けが完了するのもメリットです。さらに、ゼロプラスのように買い取りに対応している業者なら、処分費用と相殺できて費用を低く抑えることができるでしょう。
4-2.福祉住環境整理に必要な資格は?
福祉住環境整理については法律の定めはなく、作業をするのに特に必要な資格はありません。内容的には生前整理・遺品整理と共通部分が多いので、遺品の取り扱いに詳しい「遺品整理士」に任せれば安心でしょう。
4-3.業者の選び方
不用品回収業者の中には、悪質な業者もいます。以下の点を参考に、数社から見積もりを取って、比較検討してください。
- 福祉環境整理・生前整理などで実績があるか
- 不用品の中にリユース・リサイクルできるものは買い取り可能か
- 営業に必要な許可を受けているか
- 見積もりは無料か
- 損害賠償保険に入っているか
4-4.費用と流れ
不用品回収の料金は、一般的に、回収する品物の量と作業員数・作業時間によって決まります。1例として、1DKで作業員2名で約8万円~、1LDKで作業員3名なら約13万円~でしょう。
大量の不用品がある場合には、回収品の容量に応じた「積み放題プラン」を用意している業者を利用するとお得です。たとえばゼロプラスの場合は、平車(1K~1DK程度)で69,800円(作業時間:約1時間)、2トンホロ車(1LDK~2K程度)99,800円(作業時間:約3時間)となっています。
5.よくある質問
Q.介護認定を受けていないと福祉住環境整理はできないのですか?
A.福祉住環境整理は法律で定められてものではありません。介護認定を受けていなくても整理をすることができます。ただし、認定後なら介護サービスの一環として保険適用される場合があるのでケアマネージャーに相談してみましょう。
Q.福祉住環境整理は立ち合いが必要ですか?
A.できるだけ立ち会うほうがいいでしょう。業者によっては事前に作業内容を指示することで、立ち会いが不要な場合もあります。
Q.自分で福祉住環境整理をする場合、不用品はどう処分したらいいでしょう?
A.自治体のゴミ収集に出す方法と、不用品回収業者に処理を依頼する方法があります。自治体のゴミ収集は、大量のゴミには対応していない場合もあるので問い合わせが必要です。
Q.悪徳業者とのトラブルにはどんなものがありますか?
A.よくあるのは、見積もりは無料といいながら出張費などを請求されたり、貴金属などの盗難、見積もりにはない高額なオプション請求などのトラブルです。おかしいなと思ったら、最寄りの消費生活センターにご相談ください。
Q.業者の作業中に物品や壁・床の破損があった場合は補償されますか?
A.損害賠償保険に入っている業者を選ぶといいでしょう。ゼロプラスなら最高1億円まで補償できます。
まとめ
高齢者が最後まで住み慣れた環境で生活するためには、住環境の整理が必要不可欠です。大量の不用品があり自分で処分仕切れない場合は、福祉住環境整理業者に依頼するなど、プロの力を借りるのもいいでしょう。