デジタル遺品を安全に処分! トラブルを防ぐ方法は?
「デジタル遺品」というものをご存じでしょうか。遺品というと、大切な思い出の品など、形を持ったものを想像する方が多いと思います。デジタル遺品とは、データとしては存在するものの、形を持たない遺産のことです。
デジタル遺品を処分するには、形を持った遺品を処分するよりも面倒な手間がかかる場合があります。いったいどうすればいいのか、方法を学んでいきましょう。
1.デジタル遺品とは
まずは、耳慣れない言葉であるデジタル遺品について、詳しく説明します。「形があるわけじゃないから、そのままにしておけばいいのでは?」と思う方もいるでしょう。しかし、適切に処分しなければまずい理由もあるのです。
1-1.どんなデータがあるのかわからないのが問題
デジタル遺品は、主にスマートフォンやパソコンの内部に保存されています。このとき問題になるのが「第三者から見て、何があるのかひと目でわからない」ということです。
たとえば、形のある遺品であれば故人が亡くなったあとでも、掃除をすれば家族だけで片付けることができます。しかし、データとなると「このIDとパスワードはどのサイトのものなのか」といった「保存した本人以外にわかりにくいデータ」が必ず出てくることになるでしょう。
1-2.何があるかわからないまま捨ててしまうのは問題
「亡くなった人以外は使わないから、何が入っているのかわからないけどパソコンごと捨ててしまおう」と考えるのは早計です。後ほど詳しく説明しますが、デジタル遺品には処分してしまうとまずいデータが含まれている場合が少なくありません。
どこにどんなデータがあるのかわからないまま捨ててしまっては、あとで必要になったときに探しだすことさえできなくなります。つまり、問題を解決するための方法が永遠に失われてしまうことを意味するのです。
1-3.「家族には見てほしくない」データが入っている可能性も
だからといって、デジタル遺品を徹底的に調べるのも考えものです。誰しも「他人には絶対に見せたくない、恥ずかしい持ちもの」は少なからずあるでしょう。そうしたものをデジタル遺品整理の過程で知らず知らずのうちに見つけ出してしまうこともありえるからです。故人にしてみれば、自分が亡くなったあとで尊厳を辱められているように感じられるでしょう。
必要なデータと必要でないデータは、第三者が見ても判断しづらいものです。ましてや「必要でないデータは避けて」デジタル遺品を整理するのは困難なもの。こうした点が近年、デジタル遺品に注目が集まっている背景にあるのです。
2.デジタル遺品が元で生じるトラブル
デジタル遺品は取り扱いが難しいため、しばしばトラブルの原因になります。この章ではデジタル遺品が原因でどのようなトラブルが生じる恐れがあるのか、いくつかのパターンをご紹介しましょう。
2-1.あとになって資産が見つかることもある
デジタル遺産の中でも特に厄介なのが「家族も存在を知らない銀行口座」です。近年はオンラインバンキングなどのサービスが発展しており、実店舗を訪れなくても銀行口座を容易に開くことができます。そのため、家族であっても故人の銀行口座を知らないというケースが少なくありません。
もし、遺産整理が済んだあとで、デジタル遺品のなかから知らない口座の登録情報が見つかったとしたらどうなるでしょうか。遺産トラブルが発生する可能性もありますし、ほかの親族から「遺産を隠したのではないか」とあらぬ疑いをかけられてしまうことも考えられます。金銭トラブルは親戚とのその後の付き合い方にも影響を及ぼす問題なので、できる限り穏便に済ませたいところです。
2-2.有料サービスの料金が引き落とされ続ける
故人が月額制の定額料金サービスを利用していた場合、本人がなくなった時点でサービスの運営会社にその旨を伝え、サービスを退会しなくてはなりません。しかし、故人の家族がサービスに登録していることを知らなければ、手続きをすることは不可能です。登録者がなくなったことがサービスの運営元に知らされず、また、家族もそのようなサービスが存在することに気が付かないまま、延々と使用料金が登録口座から引き落とされていくことになります。
また「サービスに登録していたこと自体は知っていたが、登録情報がわからない」ということもあるでしょう。解約するためにはIDやパスワードなど、登録解除に必要な情報を運営会社に尋ねる必要が出てくるので、余計な手間がかかってしまうことになります。
2-3.プライバシーにかかわる情報が外部に漏れてしまうトラブル
パソコンやスマホなど、デジタル遺品が収められていた媒体を処分するとき、収められているデータが誰かに知られてしまうかもしれません。中には、個人情報にかかわる情報が含まれている場合もあるので、犯罪などに利用されると残された家族が害を被ってしまう可能性もあります。
3.デジタル遺品を安全に処分する方法
デジタル遺品を安全に処分するには、まず必要な情報と必要でない情報を整理しなくてはなりません。その後、必要な情報だけを残された家族に伝え、必要でない情報は誰の目にも触れないよう、消去してしまう必要があります。
3-1.デジタル遺品の「生前整理」をしておこう
生前整理とは、亡くなる前にあらかじめ遺品の整理を進めておくことです。生前整理は実態を持った遺品だけについて語られることが多いですが、もちろんデジタル遺品に対しても有効に機能します。
家族に見せる必要があるデータと、そうではないデータをわかりやすく分けておき、自分以外の人が見たときにひと目でわかるようにしておきましょう。
3-2.見てほしくないデータにはパスワードを掛けておく
もしかすると、家族や第三者が偶然、見てほしくないデータを開いてしまうことがあるかもしれません。そのため、見てほしくないデータにはパスワードを掛けておき、簡単には閲覧できないようにしておいてください。あらかじめ家族に意図を伝えておけば、あえてパスワードを解除してまで中身を見ようとはしないでしょう。
3-3.エンディングノートを残しておく
エンディングノートとは、自分が亡くなった後のことについて、生きているうちに望みを書いて残しておくものです。遺書とは異なり法的拘束力はありませんが、デジタル遺品を整理するには十分でしょう。
「デジタル遺品のうち、家族にとって必要なデータはこの場所に保存してあるから、ほかのデータは削除した後に処分してほしい」などと必要なデータの在りかを家族に伝えておくのです。家族にしてみれば、面倒な遺品整理の手間が省けますし、亡くなる方本人にとっても、見てほしくないデータにアクセスされる恐れがなくなるため、安心できる方法だといえるでしょう。
まとめ
今回は、形を持たない「デジタル遺品」を安全に処分し、余計なトラブルを防ぐための方法をご紹介してきました。最後に全体を振り返っておきましょう。
- デジタル遺品とは
- デジタル遺品が元で生じるトラブル
- デジタル遺品を安全に処分する方法
デジタル遺品は、多くの場合金銭トラブルの原因になりかねないものです。取り扱いには細心の注意が求められるため、事前によく処分方法を準備しておくといいでしょう。遺品整理がすっきりと片付けば、心ゆくまで故人をしのぶことができます。亡くなる方にとっても残される家族のとっても「いい終わり方」になるといえるのではないでしょうか。