相続放棄前に遺品整理をしてはいけない理由は? 相続放棄の判断基準も!
相続放棄を検討している方は、遺品整理をしてはいけない決まりがあります。そのことを知らずに遺品整理を始めてしまうと、相続放棄ができなくなってしまうので注意しなければなりません。大切なのは、相続放棄と遺品整理の関係性をきちんと把握することでしょう。
そこで、本記事では、相続放棄前に遺品整理をしてはいけない理由について解説します。
この記事を読むことで、相続放棄前に遺品整理をしてはいけない理由のほか、相続放棄するかどうかの判断基準も分かります。悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
1.相続放棄前に遺品整理をしてはいけない理由は?
最初に、相続放棄前に遺品整理をしてはいけない理由をチェックしておきましょう。
1-1.家財道具などを処分する遺品整理
まずは、遺品整理がどのようなものなのか基本情報を把握することが大切です。遺品整理とは、故人が住んでいた家の家財道具などを処分したり整理したりすることとなります。一見、簡単な作業のように感じますが、遺品を処分することは所有権を引き継ぐことと同じです。つまり、遺品整理=故人から所有権を引き継ぐということになります。相続破棄を検討している方が遺品整理をしてしまうと、相続する意思の表れになってしまうので注意しなければなりません。
1-2.相続放棄=相続人ではない
相続放棄前に遺品整理をしてはいけない理由は、相続放棄をした者の位置付けにも表れています。基本的に、民法上では相続放棄をした者は最初から相続人ではなかったとみなされることになるのです。遺品整理は故人の財産を処分する権利がある者だけがしてもいいことですので、相続放棄をした相続人には故人の財産に触れる権利がありません。従って、権利のない者が遺品整理をしてしまうと相続の意思があるとみなされてしまいます。放棄されたはずの相続が否定されてしまい、相続したものとみなされてしまうというわけです。
1-3.あとで取り消しはできない
相続放棄前の遺品整理に関して注意しておきたいことはほかにもあります。それは、一度遺品に手をつけてしまうと、相続放棄ができないことです。相続放棄の意思を親族に伝えていたとしても、遺品に触れてしまえば相続の意思を示すことになるため、あとで取り消すことはできません。相続放棄前に遺品に触れるのはもちろん、相続放棄をしたあとも遺品に触れてはいけないことになります。「やっぱり遺品をもらいたいから」という理由で安易に遺品整理を行わないように気をつけましょう。
2.相続放棄する場合の遺品整理義務は?
ここでは、相続放棄する場合の遺品整理義務について解説します。
2-1.相続放棄と遺品整理の義務は別問題
相続放棄=遺品整理の義務がなくなると思われがちですが、それは大きな間違いです。相続放棄と遺品整理の義務はまったくの別問題となります。たとえば、故人が賃貸物件に住んでいて、相続人が賃貸契約の保証人になっている場合、保証人としての責任を果たさなければなりません。保証人として明け渡し義務を負うことになるため、遺品整理を行う義務が生まれます。相続放棄をしたからといって、遺品整理の義務がなくなるというわけにはならないことをきちんと把握しておくことが大切です。特に、賃貸契約の保証人になっている場合は注意してください。
2-2.財産管理の義務は放棄できない
相続放棄をしたとしても、財産管理の義務は放棄できないことも知っておきたいポイントです。財産の管理義務と相続放棄も別問題になっているため、相続放棄をしたとしても財産の管理はしっかりと行わなければなりません。どうしても自分で管理したくない場合は、相続財産管理人を選任し、その人に遺品管理と整理を任せることができます。
ただし、相続財産管理人の選任には、20万~100万円の予納金がかかるでしょう。予納金に加え、遺品整理の作業を行う人件費など実費も必要になります。故人が大量の不用品を遺(のこ)していた場合、遺品整理の費用が高額になるケースもよくあることです。財産管理の義務を他人に手渡したとしても、費用がかかってしまうこと、その費用を支払う義務があることを覚えておかなければなりません。
2-3.相続放棄をしても遺品整理が必要なケース
ケースによっては、相続放棄をしても遺品整理の義務が発生します。たとえば、故人が孤独死で発見が遅れたケースです。孤独死で発見が遅れた場合、遺体がすでに腐乱してしまっているため、悪臭を放っているでしょう。近隣住民から苦情が出たり、害虫が発生していたりとさまざまなトラブルが起きることもあります。相続放棄をするにしても、早急な対応が必要ですし、特殊清掃を行わなければならないケースがほとんどです。
ただし、孤独死をしたケースでも相続放棄をして相続財産管理人を選任できます。前述したように、相続財産管理人を選任すれば管理する義務はなくなりますが、孤独死の場合は現場の遺品整理屋特殊清掃によって義務から逃れられない可能性もあるのです。
3.相続放棄するかどうかの判断基準
ここでは、相続放棄するかどうかの判断基準をいくつか紹介しましょう。
3-1.相続放棄のメリット・デメリット
最初に、相続放棄のメリットとデメリットについて説明します。相続放棄をするかどうかの判断基準を正しく把握するためにも、どのようなメリットとデメリットがあるのか知ることが大切です。
<相続放棄のメリット>
- 債務を引き継ぐ必要がない
- マイナスの財産(借金)を返済しなくていい
- 遺産分割手続きに関わらないで済む
- 遺産を特定の相続人に集中させることができる
<相続放棄のデメリット>
- プラスの財産を失ってしまう
- 思い入れのある財産を手放さなければならない
3-2.プラスの財産とマイナスの財産の割合
相続放棄するかどうかの判断基準として、プラスの財産とマイナスの財産の割合があります。明らかに、遺産の中身がプラスの財産よりもマイナスの財産のほうが大きいと考えられる場合は、相続放棄をしたほうがいいでしょう。相続放棄のメリットでもお話したように、借金といったマイナスの財産を引き継がずに済みます。マイナスの財産を把握せず相続して、あとで借金が発覚しても相続放棄はできません。そのため、必ず事前に遺産の中身を明らかにする必要があります。また、すべての相続人が一致する必要もないので、ほかの相続人が相続したとしても単独で相続放棄をすることは可能です。
3-3.手放したくない財産があるかどうか
遺産の中に、どうしても手放したくない財産がある場合は相続したほうがいいでしょう。その場合、多額の債務があったとしても、相続放棄しないで債務を返済する方法を考えなければならなくなります。相続放棄をすると財産のすべてを手放さなければならなくなるため、それでも手元に残しておきたいものがあれば相続すべきです。債務があったとしても、必要ない遺産をできるだけ早めに売却して債務の返済資金に充てたり、自らが保有する財産から返済したりする方法もあります。債務を引き継ぎ自分の財産から返済を行うのはとても大変なことですが、相続破棄をしたくないほどの遺産があれば後悔のない選択をしたいものです。
3-4.特定の相続人に遺産を集中させたい
特定の相続人に遺産を集中させたいと思っている方は、相続放棄をしたほうがいいでしょう。前述したように、相続放棄をする人は遺産を一切相続しないことになります。つまり、相続放棄をした人の分だけ、ほかの相続人の相続分が増えることになるのです。1人の相続人を除き、全員が相続放棄を行うことになれば、自動的に1人だけが遺産を相続することになります。ただし、遺産を特定の相続人に集中させるのなら、相続放棄を行うよりも相続分の譲渡を行うほうが効果的でしょう。
3-5.相続に関するトラブルに巻き込まれたくない
遺産の額が大きくなればなるほど、相続に関するトラブルが発生しやすくなるものです。それまで仲の良かった兄弟同士であっても、相続トラブルになり不仲になったケースはたくさんあります。このような相続に関するトラブルに巻き込まれたくない気持ちが強いのであれば、相続放棄をしたほうがいいといえるでしょう。相続放棄をすることで遺産分割協議に参加したり、家庭裁判所で調停や審判に関わったりする必要がなくなります。相続に関する面倒な手続きから逃れるためには、相続放棄をするしかありません。
3-6.相続したくない土地や建物がある
遺産の中に相続したくない土地や建物がある場合、相続放棄をしたほうがいいでしょう。特に、相続しても利用価値のない不動産が財産の大半を占めているケースです。利用価値のない不動産を相続したとしても、何のメリットも生まれず、ただただ固定資産税を支払い続けなければならなくなります。老朽化した不動産は取り壊さなければならなくなる可能性もありますし、維持管理をするにも多額の費用がかかってしまうものです。自分にとって相続しても利用価値のない財産が大半を占めている場合は、相続放棄をしたほうがいいでしょう。
4.相続放棄と遺品整理に関してよくある質問
相続放棄と遺品整理に関する質問を5つピックアップしてみました。
Q.相続放棄の予定がある人が押さえるべきことは?
A.早めに方針を決めることが重要なポイントとなります。なぜなら、相続放棄は相続開始を知ってから3か月以内に手続きをする必要があるからです。なお、この3か月の期間は熟慮期間とも呼ばれています。相続開始を知ってから3か月以上が経過している場合、相続放棄をしたくても手続きができなくなってしまうので注意が必要です。相続放棄を検討している方は早めの行動を心がけましょう。
Q.遺産分割協議と相続放棄の違いは?
A.遺産分割協議とは、相続が発生した場合に共同相続人全員で遺産の分割について協議し合意することです。遺産分割協議を行うことで、法定相続分や遺言の内容と異なる割合で相続分を決めることもできます。また、相続放棄との違いは、機嫌がないことでしょう。そのため、相続を知ってから3か月を経過してしまった場合、遺産分割協議によって特定の人に遺産を引き継がせるケースも多いのです。
Q.遺品整理における相続関連トラブルの防止策は?
A.弁護士に相談することでしょう。相続放棄を検討している方でも、遺産の額がハッキリと分からなかったり、知らないところで故人が大きな財産を遺していたりするケースがあります。また、ケースによっては遺品の整理や清掃が必要になることもあるため、トラブルを防ぐためにも専門家の意見を取り入れることが大切です。弁護士は法律関連のプロですので、トラブル防止策の案も出してくれるでしょう。
Q.相続放棄をする際の注意点は?
A.遺品整理や手続きの期限だけでなく、限定承認が有効なケースも注意しておかなければなりません。資産と負債のバランスが明らかになっていない場合、限定承認という手続きが有効になります。限定承認とは、相続財産に資産と負債が混在する場合、資産額に限定して負債を相続することです。限定承認の選択を検討している方は、相続放棄を選択すべきではありません。
Q.遺品整理をスピーディーに終わらせるコツは?
A.遺品整理サービスを利用することです。遺品整理サービスとは、自分の代わりに遺品の整理や不用品の片付けを行ってくれるサービスとなります。たとえば、遠方に住んでいる場合、故人の家に行くまで時間がかかりますし交通費もかさんでしまいがちです。けれども、遺品整理サービスを利用すれば、手間と時間をかけることなくすぐに遺品整理を終わらせることができるでしょう。不用品回収買取と遺品整理を行っているゼロプラスでは、無料相談を受け付けているのでお悩みの方はぜひ一度ご相談ください。
まとめ
相続放棄前に遺品整理をしてしまうと、相続の意思があるとみなされるので注意しなければなりません。相続放棄を検討している方は、遺品に一切触れないように気をつけましょう。また、相続放棄をすべきか悩んでいる方は、まず故人の遺産内容をきちんと明らかにすることが重要です。プラスの財産とマイナスの財産それぞれのバランスなど、さまざまなことを踏まえた上で後悔のない選択をしましょう。