遺言書の筆跡鑑定を依頼する方法は? 偽造発覚時の対処法も詳しく!
「遺言書を筆跡鑑定してもらいたいが、どこに依頼できるのだろう」「遺言書の筆跡鑑定を依頼するときの注意点を知りたい」とお考えではありませんか? 何らかの理由で遺言書の偽造が疑われるときは、筆跡鑑定により真偽を明らかにする必要があります。しかし、どこにどんな方法で依頼すべきか、どんな点に注意すべきかなど、よく分からないですよね。
そこで今回は、遺言書の筆跡鑑定について詳しく解説します。
この記事を読むことで、遺言書の筆跡鑑定を依頼する方法やポイントがよく分かります。まずは、記事を読んでみてください。
1.遺言書の偽造でよくあるトラブル事例
最初に、遺言書の偽造でよくあるトラブル事例について見ていきましょう。
1-1.遺族が遺言書を偽造した
遺族が遺言書を偽造していたことが発覚し、トラブルに至ることもあります。よくあるパターンとしては、特定の遺族に多くの遺産が渡るように書き直すケースです。特定の遺族が多く遺産をもらうためには、故人の遺言が必要になります。そのため、偽造してあたかも故人が指示したように見せかけるのです。遺産が特に多い場合や、以前から遺族同士の仲が悪い場合によく見られます。
1-2.まったく関係のない第三者が偽造した
相続にまったく関係のない第三者が遺言書を偽造するケースもあります。たとえば、故人の息子や娘などを名乗った人物が、証拠として遺言書を提示するパターンです。本当に実の息子や娘なのか確認しようとしても、故人に直接聞くわけにもいきません。そのため、遺言書を偽造しやすいともいえます。なお、故人と血縁関係があるかどうかについては、遺言書の偽造疑惑とは別の問題です。血縁関係の有無もハッキリさせたい場合は、血液鑑定やDNA鑑定なども別途考えたほうがよいでしょう。
2.遺言書の筆跡鑑定が必要なケースは?
遺言書の筆跡鑑定が必要なケースを詳しく見ていきましょう。
2-1.明らかに故人の筆跡ではない
自筆の遺言書があっても、明らかに故人の筆跡ではない場合は、筆跡鑑定が必要になります。この場合、一目見ただけで別人の筆跡と分かるケースであっても、第三者の目から見て別人のものだと鑑定してもらうことが大切です。なお、親族などが偽造した疑いがある場合は、併せて偽造者を特定してもらうこともできます。
2-2.遺言書の内容が生前に話していたものと大きく異なる
遺言書の内容が生前に話していたものと大きく異なる場合は、偽造を疑ってみてください。たとえば、会社や実家を長男や長女が受け継ぐことになっていたはずなのに、遺言書では次男や次女を指名しているといったケースです。この場合、次男や次女が財産を多く受け取るために遺言書を偽造した可能性が高くなります。
2-3.認知症などで自筆が無理な状況にもかかわらず作成されている
遺言書があっても、認知症の人が書いたとは思えない内容であることでトラブルに発展するケースがあります。遺言書を自筆するのは、大変な作業です。一字一句間違えないように、集中して作業する必要があります。しかし、認知症がある人は、集中力に欠けるだけでなく、自分の意思をきちんと文字に書き出すこともできない場合が多いのです。そのため、遺言書の作成日によっては、本人が本当に自筆したものか疑わしくなります。こうしたケースでも、筆跡鑑定をして真偽をハッキリさせるべきでしょう。
3.遺言書の筆跡鑑定はどこに依頼できる?
遺言書の筆跡鑑定はどこに依頼できるか、詳しく解説します。
3-1.信頼できる業者の選び方
遺言書の筆跡鑑定は、以下のポイントを満たした業者に依頼すると安心です。
- 筆跡鑑定で豊富な実績がある
- 見積もりは無料
- リーズナブルかつ明確な料金システム
- スタッフの対応が丁寧で好感度が高い
- 顧客からの評判が高い
- 鑑定結果を分かりやすく鑑定書にまとめてくれる
- 守秘義務および個人情報保護を深く理解・配慮している
- 日本法科学技術学会や日本筆跡鑑定協会の会員になっている
3-2.筆跡鑑定を業者に依頼する流れ
筆跡鑑定を業者に依頼する流れは、以下を参考にしてください。
- 業者に連絡し、筆跡鑑定について相談する
- 業者から見積もりをもらう
- 見積もりの内容をチェックし、費用などに問題がなければ正式に依頼する
- 筆跡鑑定の資料を業者に提出する
- 業者指定の方法で鑑定料を支払う
- 業者から鑑定書が送られてくる
なお、業者によっては鑑定書を受け取った後での支払いになることもあります。詳しくは、業者に確認してみてください。
3-3.業者に遺言書の筆跡鑑定を依頼する場合の費用目安
業者に遺言書の筆跡鑑定を依頼する場合の費用目安は、以下を参考にしてください。
筆跡鑑定(略式)
- 通常鑑定に移る前に鑑定の方向性を見極める段階で、鑑定書の作成はしない
- 費用目安:7万~10万円程度
筆跡鑑定(通常)
- 一般的な鑑定を行い、鑑定結果の根拠まで説明して鑑定書を作成する
- 費用目安:15万~20万円程度
筆跡鑑定(裁判用)
- 通常鑑定よりも詳細に鑑定し、裁判に証拠として提出できるレベルの鑑定書を作成する
- 費用目安:30万~33万円程度
筆跡鑑定(反論書作成)
- 相手側が提出してきた筆跡鑑定書に対し、誤りを指摘する
- 費用目安:28万~35万円程度
なお、急ぎで鑑定を依頼する場合などは、オプション料金が数万円程度上乗せになることもあります。また、業者によっても金額が大きく異なるので確認してください。
4.遺言書の偽造が発覚した場合の対処法
遺言書の偽造が発覚した場合の対処法を具体的に解説します。
4-1.遺言書の偽造は違法行為に当たる
遺言書の偽造は、違法行為に当たります。具体的には、以下のとおりです。
- 民法891条5号により相続人の欠格事由に該当するため、相続権を失う
- 刑法159条1項および161条1項により、有印私文書偽造罪および同行使罪の構成要件に該当するため、3か月~5年以下の懲役が科せられる
遺言書の偽造が発覚した場合のリスクを考えれば、割に合わない行為といえます。
4-2.民事訴訟や刑事訴訟を起こすには証拠が必要になる
遺言書の偽造について民事訴訟や刑事訴訟を起こす場合は、客観性のある証拠を提示する必要があります。そこで、筆跡鑑定が役に立つのです。筆跡鑑定を提出すれば必ず認められるとは限りませんが、判決を下す際に大きなカギになります。偽造者が身内の場合は、大ごとにしたくないと考えることもあるでしょう。しかし、身内だからこそ感情を抜きにし、法律に沿って裁いてもらうことをおすすめします。
5.遺言書の筆跡鑑定に関するよくある質問
最後に、遺言書の筆跡鑑定に関する質問に回答します。それぞれ確認しておきましょう。
Q.遺言書の筆跡鑑定にかかる日数は?
A.通常鑑定で10~14日前後が目安です。裁判用になると、1か月以上かかることもあるでしょう。
Q.故人の日記を筆跡鑑定の資料として提出するのに抵抗があるのですが?
A.信頼できる業者なら、守秘義務および個人情報保護を深く理解し、配慮も行き届いているので問題ありません。また、筆跡鑑定後は速やかに返却してもらえるので安心してください。
Q.筆跡鑑定用の資料としてはどんなものが好ましい?
A.筆跡鑑定する遺言書と同じ文字がある・筆記具が同じ・原本であるなどの条件がそろったものです。自筆の日記・メモ・手帳など、故人の筆跡を確認できる証拠から、なるべく条件に近いものを複数提出するとよいでしょう。
Q.筆跡鑑定を行えば確実に真偽を断定できる?
A.100%とはいかなくても、ほぼ真偽を断定することができます。確実に判定してもらうためにも、故人が残した日記や手紙など、なるべく多くの資料を渡して鑑定に協力することが必要です。
Q.鑑定費用が高額なのでクレジットカードで支払いたいのですが?
A.業者によっては可能ですが、現金払いもしくは口座振り込みを指定されるケースが多いでしょう。詳しくは、業者に確認してみてください。
まとめ
今回は、遺言書の筆跡鑑定について詳しく解説しました。自筆の遺言書は、財産分割の際に大きな影響をおよぼします。もしも、自筆の遺言書に偽造が疑われる場合は、筆跡鑑定をするとよいでしょう。故人の日記などの筆跡を元にプロが鑑定すれば、本物かどうか明らかにすることが可能です。なお、筆跡鑑定は高度な技術が必要になります。筆跡鑑定を実際に依頼するときは、実績の多さや顧客の評判などをよく吟味し、信頼できると判断した業者に依頼しましょう。