相続トラブルはなぜ起きる? 解決方法や回避する方法を詳しくご紹介
仲がいい親族でも、いざ相続となれば、何かとトラブルが起こります。今後のつき合いにも影響するため、揉(も)め事やトラブルはなるべく避けたいと思うものです。しかし、どんなことがトラブルの原因になるのか、どう解決すればいいのかなど、疑問も多く出るでしょう。
そこで、本記事では、相続トラブルの現状や具体的な解決方法についてご紹介します。
相続トラブルは身近で起こり得るものです。解決方法と併せ、トラブル予防策などを知っておき、いざというときに備えておきましょう。
1.相続トラブルの現状
まず、相続トラブルの現状についてご紹介します。
1-1.トラブル件数は倍増している
家庭裁判所では、遺産分割審判の件数が10年前に比べ、2.3倍に増加しています。審判の対象となっているのは、遺産総額1000万円以下が3割程度、1000万〜5000万円以下が4割程度です。ひと昔前に比べ、少額案件が増えています。
1-2.どの家庭でも相続トラブルは起こり得る
富裕層に限らず、どの家庭でも相続トラブルは起こり得るものです。相続財産が少ないからと安心せず、トラブルに関する予備知識を身につけておくことが大切でしょう。
2.相続トラブルの事例
相続トラブルの具体例を見ていきましょう。
2-1.相続財産を把握できない
目録などがなく、相続財産が把握できないというトラブルがあります。被相続人が生前準備をしていなかったために起きるトラブルです。そのため、財産を隠しているのではないかと不信に感じる親族が出てきて、争いが起きるケースもあります。
2-2.遺産を独占する
遺言書などがあり、遺産のすべてを一人に託す旨が記載されているなどの場合、独占することでトラブルが起こりやすくなります。遺言書があったとしても、法定相続人には遺留分を請求できる権利があるため、裁判や調停で争うケースもあるのです。
2-3.土地や不動産など分けられない遺産がある
土地や不動産など簡単に分けられない遺産がある場合、分割について相続人間で意見が異なると、トラブルが起こりやすくなるものです。誰か一人でも遺産分割の方法や割合に反対していると、揉(も)め事に発展しやすくなるので注意してください。
2-4.寄与分がある場合
平成30年の相続法改正で「特別の寄与」という制度が創設されました。亡くなった人の介護などをしていた兄弟など相続人以外の親族がいる場合、特別な貢献をしたとして、寄与分を相続人(配偶者や子供など)に請求できるケースがあります。しかし、ほかの兄弟が寄与分を請求したが認められない場合、紛争になってしまう事例もあるのです。
3.相続トラブルの原因は?
相続トラブルの原因とはどんなものなのでしょうか?
3-1.遺産目録がない
故人が遺産目録を作成しなかった場合、トラブルの原因となることがあります。どんな遺産があるのか分からず、隠し財産があるのではないかと不審に思う人が出てくるのです。生前、きちんと目録を作成することで、トラブルになるのを回避できるでしょう。
3-2.親族間の不仲
普段から親族間の不仲がある場合、遺産相続の際にトラブルが大きくなるケースが多いのです。互いを思いやることができず、相続トラブルを機に、より深い溝ができる可能性があるでしょう。
3-3.立場を理解し合えない
故人の生前に介護のため同居していた子と別居していた子との間に温度差があり、お互いの立場を理解し合えないことも、トラブルの原因となります。互いの主張ばかり押しつけ合い、相手の言い分をきちんと受け入れず、トラブルが大きくなることも想定されるでしょう。
3-4.隠し子や内縁の妻などの存在もトラブルの原因になる
隠し子や内縁の妻などの存在が明らかとなった場合、トラブルの原因になる可能性があります。遺産相続の権利を主張され、裁判に発展するケースもあるのです。
3-5.極端な内容が記載された遺言書がある
遺言書に極端な内容が記載されている場合も、トラブルの原因となります。相続人以外の第三者に全財産を託すなどの記載がある場合などです。法的に有効性があるものかを確かめることが大切でしょう。
4.相続トラブルを解決する方法
相続トラブルが起きた場合、どんな方法で解決すればいいのでしょうか? 具体的な方法をご紹介します。
4-1.遺言書の法的効力を確かめる
遺言書の法的効力を確かめるためには、専門知識を持った弁護士などに相談することが大切です。遺言書作成時に被相続人に認知能力があったか、自筆ではない部分があるかなど、詳しく鑑定してもらいましょう。
4-2.相続財産を明確にする
相続財産を明確にすることも、トラブルを解決する1つの要素です。不動産・預金などの目録を作成し、隠し財産がないことを明らかにしましょう。
4-3.互いに信頼し合う
相続人同士が争っていては、何も解決しません。意見の違いを信頼し合うことで、物事がスムーズに進みます。また、譲り合う心を持って話し合いを行いましょう。
4-4.弁護士などに相談する
自分たちだけでは解決が難しいと判断した場合は、相続問題に詳しい弁護士などに相談する方法がおすすめです。遺産分割協議で揉めている場合にも、費用はかかりますが、弁護士などに介入してもらうことで、円滑に遺産分割の協議を終えることができます。
5.相続トラブルを防ぐには?
そもそも、相続トラブルを未然に防ぐことはできるのでしょうか? トラブルを回避する方法をご紹介します。
5-1.被相続人が遺言書を作成しておく
遺産相続に備え、被相続人が遺言書を作成しておけば、トラブルが起こりにくくなるでしょう。ただし、偏った内容にならないよう、十分配慮して作成しなければなりません。また、遺言書を作成する際は、公正証書で作成することをおすすめします。
5-2.各財産の評価額を明確にしておく
遺産分割では、評価額で意見がぶつかることが多いものです。そのため、遺産分割協議を行う前に、各財産の評価額を明確にしておくと、スムーズに協議が進みます。
6.相続トラブルでよくある質問
相続トラブルに関する質問を集めました。
Q.遺産分割協議が長引くとどうなるのか?
A.相続税の申告を原則10か月以下に行わないと、相続税の控除が受けられなくなり、相続税が上がってしまう可能性があります。税務面でのデメリットだけでなく、精神面での負担も大きいため、家族全員の心が疲弊する恐れもあるでしょう。心身の負担を考慮するなら、あまり長引かないよう対策を講じることが大切です。
Q.遺産の評価額はどう決めたらいいのか?
A.時価で評価額を決めることが大切です。時価は、売却した場合につく価格を指します。時価で算出することで、遺産相続で不平等が生じるのを防ぐことができるでしょう。
Q.遺言書に不備が見つかった場合、修正することはできるのか?
A.いいえ、できません。そのため、公正証書で確実な遺言書を作成しておくことが求められるのです。
Q.相続人が勝手に預金を引き出していた場合は?
A.まず、故人の死亡を伝え、口座を凍結してもらいましょう。預金を引き出していたことを認めた場合は、相続分から差し引きます。認めない場合は、不当利得返還請求などの訴訟を行うケースもあるでしょう。
Q.遺産の目録を作成する際は、負の遺産も記載するべきか?
A.はい、記載してください。負の遺産も相続対象となります。すべてを明確にしてから、遺産分割協議を行うことが大切です。
まとめ
相続トラブルは、仲がいい相続人の間でも起こり得るものです。トラブルを機に絶縁状態になるケースもあるため、円滑に遺産分割協議ができるよう準備しておくことが大切なポイントとなります。トラブルが起きた場合の解決方法に加え、トラブルを防ぐ方法も参考にしてみてください。