遺品整理に大切な心構えとは? 心安らかに遺品を片付けるコツ
遺品整理は、遺族の心と体に負担のかかる作業です。親や配偶者など身近な人の遺品を整理するには、心の整理がつかないと実行が難しいでしょう。いざ取りかかろうと思っても、物品の多さに戸惑い、どこから手をつけていいかわからないこともあります。近年では遺族の高齢化により遺品整理を専門の業者に依頼することも増えてきました。同時に、トラブルも報告されているため注意が必要です。この記事では、故人との思い出を気持ちよく整理するために、遺品整理の心構えについて解説し、片付けのポイントや業者に依頼する方法についても紹介します。
遺品整理の心構えを知ることで、ストレスや罪悪感に悩まされることなく遺品を片付けることができます。遺品整理で後悔しないためにも参考にしてください。
1.遺品整理について
いくら故人に対する思いが強くても、遺品をすべて取っておくことはできません。ここでは、遺品整理の考え方やどのような方法があるかを解説します。
1-1.遺品整理の意味、必要性
遺品整理とは、故人が残した品を片付けることです。日本には、古くから「形見分け」として遺品を遺族で分け合う風習がありました。しかし、近年は核家族化が進み、親が亡くなったあと実家に住む人がいなくなるケースも増えています。こうなると、思い出の品や衣類だけでなく、寝具・家具・家電をはじめ、あらゆる生活用品を整理・処分しなければなりません。特に賃貸住宅に住んでいた場合は、退去の期日までに片付けをする必要があります。
1-2.遺品整理は誰が行うのか
昔は、遺品整理は遺族が行っていました。現在でも遺族が行うことはできますが、核家族化で人手が足りなかったり、高齢化や遠方に住んでいたりすることで実行が難しいケースもあります。こうした背景により、近年では遺品整理業者に依頼する人も増えてきました。自分でやるのか業者に依頼するかは、それぞれメリットとデメリットがあるので、自分に合う方法を選びましょう。
1-3.遺品整理を自分でやる場合
時間が十分取れる場合や故人への思いが深いときは、自分で遺品整理を行うといいでしょう。身内で協力してくれる人があれば一緒に行うこともできます。ただし、あまりに思いが強い場合は、遺品を処分する作業をつらく感じることもあるでしょう。そういうときは期間を空けるなどの対処が必要になります。
1-3-1.メリット
- 費用が抑えられる
- 遺品の整理が丁寧にできる
- 作業しながら気持ちの整理をつけることができる
1-3-2.デメリット
- 時間がかかる
- 遺品整理の段取りがわからない
- 何を残すべきかの判断ができない
- 大きな家財道具の処分に困る
- ゴミの分別が大変
1-4.遺品整理を業者へ依頼する場合
スピーディーに遺品整理をしたい場合や、遠方に住んでいるなど自分でできない事情がある場合は、遺品整理業者に依頼するといいでしょう。最近は、清掃までしてくれる業者や遺品の供養や買取に対応しているなどさまざまなサービスがあります。目的に応じて選びましょう。選び方は後述します。
1-4-1.メリット
- 短時間で遺品を片付けることができる
- 遠方にいても整理ができる
- 心理的な負担が減る
1-4-2.デメリット
- 費用が発生する
- 遺品を雑に取り扱われることがある
- トラブルになる可能性がある
2.遺品整理の心構えについて
故人が大切にしていた品や思い出の品をどう処分するかは、遺品整理の最大の問題といえます。捨てることに罪悪感を持たずに遺品整理をするためには心構えが必要です。詳しく説明しましょう。
2-1.自分で遺品整理する場合の心構え
故人に近い立場であるほど、遺品整理は精神的に大変です。無理をしないで進めましょう。
2-1-1.優先順位をつけ、必要なものだけ残す
遺品を整理するとき、故人との思い出に浸っていたのでは、つらいばかりでいつまでも片付けることはできません。遺品整理とは「思い出に優先順位をつけて不要なものを処分すること」と考えて、必要なものだけを残すようにしましょう。残すものの基準を作って処分を進めていくと作業がはかどり、品物と一緒に気持ちの整理もついてくるものです。こうして遺品をとおして故人と向き合うことも、一つの供養のありかたといえます。
2-1-2.ものを処分しても思い出は手放さない
遺品整理の時期は、持ち家の場合なら急ぐ必要はありません。時間ができたときに自分のペースで片付けることができます。ただし、期限を決めて取り組まないと、必要以上に時間がかかってしまうでしょう。一方、賃貸の場合には退去期日までに片付ける必要があります。感傷に浸る間もなく大量の遺品を処分しなければならないので、つらく感じることもあるでしょう。しかし、ものを処分しても故人との思い出がなくなるわけではありません。遺品を放置することのほうが故人に対して失礼であると考えて、遺品整理に取り組むといいでしょう。
2-2.遺品整理を業者に依頼する場合の心構え
後悔しない遺品整理のためには、業者に何を望むかを決める必要があります。ここでは、業者を選ぶ心構えについてお伝えしましょう。
2-2-1.遺品整理の知識を身につける
遺品整理は、依頼する側にとっては初めてのことが多く、不慣れなため業者の言うままになってしまうケースがあります。葬儀の段取りほど時間的に余裕がないわけではないので、まずは情報を収集して、冷静に判断できるようにしておきましょう。
2-2-2.遺品整理業者の専門性を見極める
遺品整理業者には、遺品整理に特化した専門業者をはじめ、清掃業や不用品回収業などから参入している業者もあります。注目したいのは、遺品整理士などの資格を持つ人材を配備していることです。これは民間資格ですが、遺品整理の専門家としての知識を有し、遺族に寄り添うサービスを提供しています。
相手はプロですが、だからといって丸投げせず、依頼者側が主導権を持つことが大切です。業者には、何を重視して作業してほしいかを、はっきりと伝えておく必要があります。
3.遺品整理、自分でやる方法
親の遺品整理を自分でやる場合を例にとって説明します。
3-1.遺品整理のタイミングと流れ
遺品整理は一般的に、四十九日や一周忌など故人の法要を営むタイミングで行うことが多いものです。具体的には主体となる人の都合がつきやすい日でスケジュールを組みます。一人では大変なので、身内の誰かに手伝ってもらうといいでしょう。
3-1-1.準備編・片付け前にやること
- 住居の状況確認:賃貸の場合は退去の日取りを決める。持ち家の場合は、家を相続した人が主体となって行うとトラブルが少ない
- 参加者の選定:1日では終わらないので、兄弟や親類など交代でシフトを組む
- ゴミ出し:地域のルールを調べてゴミの仕分けや収集日を確認しておく
- 費用の分担:ゴミ処分費用・賃貸契約の清算など、遺品整理にかかわるお金の出入りを記録しておくとよい。費用は誰が払うか遺族で話し合って決める
- スケジュールを組む:参加者の役割分担し、スケジュールを立てる
- 方針を決める:何を残すか、家具や家電など大型品をどうするかなど基本方針を決める。必要なら業者を手配する
3-1-2.実践編・遺品別片付けのコツ
- 仕分け:「必要なもの」「捨てるもの」「保留」に仕分ける。「使えるかどうか」を判断基準にしないこと。思い出の品など迷ったものは「保留」にしておいてあとで考える
- 衣類・着物:形見分けやリサイクルに出して、取っておくのは2着だけなど数を決める
- アルバム:自分が見て誰だかわかる写真だけ残す。何冊もあるアルバムを1~2冊のダイジェストにしておくとよい
- 食器:きれいなものを数点だけ残し、あとは処分。未使用の高級品は売却も
- 賞状・トロフィー:代々残せるようなものは取っておいてあとは処分。画像で残す方法もあるが、結局見ないことが多い
- 重要書類:預金通帳・土地の権利書・保険証券など、重要な書類や印鑑は必ず見つけておく
- 家具・家電:新しいものは売却できる場合もある。それ以外は粗大ゴミとして処分
3-2.遺品整理の注意点
遺産相続人全員の同意が得られないと、遺品を勝手に処分することはできません。遺品をリサイクルや買取に出すのは、遺産分割協議が終わってからにしましょう。
4.遺品整理、業者に依頼する方法
遺品整理をしていると思わぬものが出てくることがあります。「全部処分してください」と業者に一任するのではなく、できれば立ち会ってその都度判断することが望ましいでしょう。立ち会えない場合は、細かい指示を書面で出しておきます。
4-1.遺品整理の依頼の方法
- 残すものを決めて明確に伝える(家具・現金・着物・手紙など)
- 必要な遺品が見つかっていない場合はそれを探してもらうよう依頼する(有価証券・土地の権利書・思い出の写真など)
- 個人の趣味の品やコレクションをどうするか決めておいて指示を出す
- 家具・家電や売れそうなものはまとめて売ってもらう
- 人形や仏具など供養をしてもらうか決める
4-2.遺品整理業者の選び方
遺品整理業者選びは慎重に行いましょう。中には遺品をゴミのように雑に扱う業者も存在するのです。また、費用面でのトラブルも報告されています。必ず現場を見たうえで見積もりを出してもらいましょう。以下のチェック項目を参考に業者を選んでください。
- 営業年数が長い
- 実績が豊富
- 料金体系が明確
- 無料で詳細な見積もりが出る
- 遺品の買取・供養・清掃など、自分が必要としているサービスが受けられる
- 立ち会えない場合の報告方法が明確
4-2-1.料金の目安
遺品整理の費用は、部屋の広さだけでなく遺品の量や状態によっても異なります。下記はゼロプラスの大まかな目安の一例です。
- 1DK:スタッフ2名 2~3時間 69,800円~
- 2DLK:スタッフ4名 5~6時間 149,600円~
- 遺品供養(オプション):合同供養-無料、個別供養-段ボール1箱3,000円~
- ハウスクリーニング(オプション):1DKアパート 25,000円
5.遺品整理の心構えや片付けに関するよくある質問
遺品整理をするときの心構えや片付けに関する質問をまとめました。
Q.遺品を処分することに抵抗があります。
A.遺品処分は故人のためでもあると考えてみましょう。自分の手で処分することが難しい場合は、遺品整理業者に相談することもおすすめです。
Q.遺品整理にとても時間がかかります。スムーズに進めるコツを教えてください。
A.遺品の片付けが進まないのは「迷う」のが原因です。迷っているうちに時間がたってしまい、体力も気力も消耗してしまいます。迷ったものは一旦「保留」にしておいて、あとで考えるとはかどるでしょう。
Q.業者に頼む場合立ち合いは必要ですか?
A.業者による金品の持ち去りや破損などのトラブルを防ぐためにも、立ち会うことをおすすめします。遠方の場合は、指示を細かく出しておき、画像や報告書などで報告してもらいましょう。
Q.写真や人形などはゴミとして捨てるのは気が引けます。どうしたらいいでしょう?
A.「お焚き上げ(おたきあげ)」といって、神社や寺院で炎により清めてもらうことができます。受け入れ可能な品を問い合わせてから持ち込みましょう。
Q.故人の趣味のコレクションはどうしたらいいでしょう?
A.同じ趣味の仲間がいればその人に譲ると喜ばれます。引き取り手がない場合は思い切って処分してもいいでしょう。
まとめ
遺品整理は「もの」をとおして故人が生きた軌跡とじっくり向き合う最後の機会です。自分でやるにしても業者に依頼するにしても、故人のとの思い出をより良い形で残すために、しっかりとした心構えで取り組みましょう。